役員退職金を支給するときの税務上の注意点

役員退職金を支給するときの税務上の注意点 役員が退任する場合にそれまでの貢献に応じて役員退職金を支給することがあります。この役員退職金を支給するとき、どのような税務上の注意点があるのでしょうか?税理士がポイントを解説しま … 続きを読む 役員退職金を支給するときの税務上の注意点

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役員退職金を支給するときの税務上の注意点

役員が退任する場合にそれまでの貢献に応じて役員退職金を支給することがあります。この役員退職金を支給するとき、どのような税務上の注意点があるのでしょうか?税理士がポイントを解説します。

 

過大役員退職金(不相当に高額な役員退職金)に注意

役員退職金は原則として損金算入することができますが、役員退職金が不相当に高額である場合は、その部分については損金算入することができません。

不相当に高額であるかどうかについて明確な基準はありません。その会社の業種や規模、役員の在任期間、その他の事情を考慮して、妥当な水準を決めることとなります。

明確な基準がないため、税務調査があると、論点になることがよくありますので、注意が必要です。

では、問題にならないようにするにはどうすればよいのでしょうか?

 

役員退職金を決める際には「功績倍率法」という計算方法がよく用いられます。

(功績倍率法による役員退職金の計算)

役員退職金=最終の役員報酬(月額)×勤続年数×地位毎に定めた功績倍率

 

例えば、最終の役員報酬が月額100万円、勤続年数15年、功績倍率3倍(代表取締役を退任)のときの役員退職金は次のように計算されます。

100万円×15年×3倍=4,500万円

 

功績倍率法はよく用いられている方法ですので、この方法による場合は、功績倍率が同業者や同規模の会社として不合理でなければ、妥当な役員退職金(不相当に高額でない)であると認められる可能性は高いでしょう。

 

 

役員退職金の損金算入時期に注意

役員退職金は、原則として、株主総会の決議等によって具体的に確定することとなります。そのため、株主総会の決議等のあった日の属する事業年度に損金算入することが原則です。ただし、役員退職金を支払った事業年度に損金経理した場合には、支払った事業年度に損金算入することもできます。

つまり、役員退職金の損金算入時期は次のようになります。

原則 株主総会の決議等のあった日の属する事業年度
例外 役員退職金を支払った事業年度

 

注意しないといけないのは、株主総会の決議等によって確定するまでに、内定した金額で未払計上していた場合です。その場合は、未払計上した時点で損金算入することはできません。

 

 

役員が分掌変更にしたときに支給する役員退職金

役員の地位・職務内容が大きく変わるような分掌変更を行い、実質上、「退職したときと同様の事情が認められる場合」にあるときには退職金を支給することができます。

例えば、次のようなケースが考えられます。

①常勤役員から非常勤役員への変更

②取締役を退任して、監査役に就任

③分掌変更後の役員報酬がおおむね50%以上減少

 

ただし、分掌変更後も、経営上重要な地位に残っているときなどは、認められません。
例えば、オーナー社長が退任し、会長として残るような場合などでは、退職金として取り扱うことができない可能性があります。

 

 

勤続年数が短い役員は退職所得の計算が違う

役員退職金を受け取った人は、その退職金に対して所得税がかかります。このとき、退職所得となる金額は、その年中に支払を受ける退職手当等の収入金額から、その人の勤続年数に応じて計算した退職所得控除額を控除した残額の2分の1に相当する金額とされています。

ただし、役員等勤続年数が5年以下である人の退職所得の金額は、退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額に相当する金額とされました。つまり、2分の1をすることができないため、勤続年数が5年超の役員等に退職金を支給した場合よりも所得税は多く計算されることとなります。

 

まとめ

役員退職金を支給するときの税務上の注意点について解説しました。役員退職金は高額となることが多く、取扱いを間違えると大きな影響があります。役員退職金の税務上の注意点を理解して、取扱いを間違えないようにしましょう。